渡邊雄太、勝負のシーズンへ

Nov. 9, 2017

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 いよいよカレッジ生活最後のシーズンーーー。ジョージ・ワシントン大の4年生を迎えた渡邊雄太にとって、2017〜18シーズンは極めて重要な1年になることは間違いない。最上級生のエースとして、自身の活躍がチームの勝利に直結する。そして、今年中に力を見せることが渡邊のバスケットボールプレーヤーとしての未来にも繋がる。

 過去3年間、平均得点7.4→8.4→12.2と順調に数字を伸ばしてきた。ペリミターでのディフェンス面でも開眼し、昨季はA-10カンファレンスのオール・ディフェンシブチームにも選ばれた。迎えた今季は3人のキャプテンのうちの1人に任命された。"GW"のベストプレーヤーとして、全米に名前を轟かせるべきときがやって来たのだろう。

 

 

 ここに辿り着くまで、すべてが順風満帆だったわけではない。渡邊が渡米したのは2013年9月のこと。当時はコート上でのプレー云々以前に、日常生活のコミュニケーションが難しかった。「(プレップスクールの)セント・トーマス・モア・スクールの時は相手が何を言っているかもわからない状態でした」と渡邊は苦笑いで振り返る。

 「アメリカのバスケットボールに入ってプレーするのも初めてで、苦労することはたくさんありました。英語は一切喋れなかったですし、周りの人も誰も知らないような状況。最初はレストランで注文の仕方が分からないとか、そういうレベルでした」

 話されている言語、生活環境が日本とは大きく異なる新大陸。そんな場所に20歳前後で住み始め、経験する苦労は留学したことのある人なら少なからず理解できるのではないか。異文化の中で消極的になり、埋没してしまっても仕方なかっただろう。しかし、新しい日々に戸惑いながらも、渡邊には常に快適に感じられる場所があった。

 「最初の方からバスケットボールのプレー中はあまり苦労することはなかったイメージがあります。言いたいことをチームメートに伝えたりはできなかったんですけど、コーチが自分に何を求めているのかとか、そういうのはわかった。バスケットに関してはそんなに言葉も困らなかったんです」

  "聖域"とでも呼び得る大切な場所=コートがあったことが、渡邊の適応と成長を大きく助けたことは容易に想像できる。2014年11月にジョージ・ワシントン大でデヴューした直後はあどけなさが残っていたが、実際にコート上ではぎこちなさは見えなかった。苦手だった英会話も順調に進歩し、2、3年と進むにつれて、試合後の会見で堂々と英語で受け答えをする機会も増えていった。

 「初めて会ったとき、ユウタは"Hi(こんにちは)"しか言えなかった。それが今では英語でジョークを言うまでもなった。そんなエピソードこそが、彼がどれだけ長い道のりを歩んできたかを物語っているんじゃないかな」

 2015〜16年のチームでキャプテンを務め、現在はジョージ・ワシントン大に職員として勤務するジョー・マクドナルドはそう述べる。過去3年間の中で渡邊が遂げた成長と適応の両方が窺い知れる逸話と言えよう。

 これまでの日々を振り返り、渡邊は「アメリカに来て本当に正解だった」と目を輝かせる。心身両面で少しずつ大きくなってきた23歳は、さらに次の段階に進むべき時期にさしかかっているのだろう。今季の渡邊にかかるのは、ジョージ・ワシントン大を引っ張る"チームリーダー"への期待である。

 「ユウタはリーダーになる準備ができていると私は考えています。彼はチーム内最高のハードワーカーなので、自身の行動で規範を示せるのです。チームのベストプレーヤーが、ベストディフェンダーであり、同時に極めて練習熱心であるのは素晴らしいことです。また、彼は今では自ら声を出し、若い選手たちを積極的に助けるようになりました。このチームが成功するために、自分が強力なリーダーにならなければいけないことを理解しているのでしょう」

 モーリス・ジョセフHC(ヘッドコーチ)はそう語り、渡邊のリーダーとしての資質に太鼓判を推す。4、5年前はほとんど会話もできなかった日本生まれのプレーヤーが、今では下級生を引っ張るヴォーカルリーダーになったのだ。

 今季のジョージ・ワシントン大は、昨季からかなりのメンバーが入れ替わった。エーススコアラーだったタイラー・キャバナー(現在はアトランタ・ホークスのGリーグチームに所属)が卒業し、代わりに渡邊が大黒柱の役を担わなければならない。攻守両面で奮闘し、精神的支柱としてもチームを支えない限り、群雄割拠のA10カンファレンスでの上位進出は難しいはずである。

 「1〜3年のときは自分の役割をとにかくこなすという感じでした。今年はディフェンス面では常に相手のエースをマークして、オフェンス面でも自分が点を取って、さらにリバウンドも取って、チームメートのためにアシストもして・・・・・・すべての面で自分がベストプレーヤーとしてやらないといけません」 

 エースとしての自覚を感じさせる渡邊は、そう意気込みを語っている。

 冒頭で述べた通り、個人としても、今季に頑張ればNBAスカウトへのアピールになる。大目標であるNBA入りへの可能性を上げるためにも、最上級生として好成績を叩き出しておかなければいけない。そして、話は渡邊個人のキャリアだけに止まらない。日本バスケットボール界の未来を考えた上でも、NCAAディヴィジョン1で渡邊が活躍することには大切な意味があるのだろう。

 「プレップ・スクールを経て、ジョージ・ワシントン大学に来てこれが4年目になります。自分がここで成功すれば、後に続く後輩たちにも繋がる。アメリカに来たいと思う選手、実際に来る選手が増えるんじゃないかなと。他の選手たちにどれだけ影響しているかはわからないですけど、アメリカに行きたいと言う選手が増えているという話は聞いています。自分のやってきたことが、多少なりともの下の世代に繋がっていれば、嬉しいなと思っています」

 渡邊は今では多くのものを背負っている。その背中の向こうに、ジョージ・ワシントン大と、日本バスケ界の明るい未来がうっすらと透けて見えて来るようでもある。

@GW_MBB

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